FGO第二部 Lostbelt No.3 プレイ日記17 異聞帯の人と民



最初に咸陽を見た時、私は孔雀の羽のようだと思った。
機械や構造物・人工物というよりは、自然のような宇宙のような、超常染みた不思議なデザインの方向性は、今回登場する「あのキャラクター」にも繋がっていった。

……となると、孔雀というよりは鳳凰や不死鳥をイメージしていた、といったほうが正しかったのかな?
とても面白くて独特な方向性だったと思う。
〇〇〇、というキャラクターから連想されるイメージとは随分と異なりつつも、意匠も汲んでいる良いデザインだ。

プロの絵描きさんはすごいなぁ。ぼくにはとてもできない……の定番ネタはさておき、実は最初の最初に見た瞬間は、正直に言ってしまうと「イケメンか……」と少し残念がってしまったのも本音だ。
ソシャゲ脳が過ぎて、わかりやすいイケメンや美少女・女体化に変な先入観を抱いてしまうようになったのは我ながらよくない。
しかし、ストーリーと設定を踏まえれば、『完璧、完全なただひとりの人』である以上は、美しいことも若々しいことも当然だった。

今では納得しているし、良いデザインだなぁと感心している。
だがそれはそれとして、非イケメン・老人老婆系鯖はもっと欲しい。



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※本記事ではサーヴァントの真名を表記しています





空想樹の目覚め






項羽と虞美人が敗北し、主人公たちが扶桑樹に辿り着く、その直前。
ようやく再起動を果たした始皇帝への当てつけのように、空想樹を目覚めさせたコヤンスカヤ。

中国異聞帯が剪定事象であることを、今まで始皇帝は信じていなかった。
ヒナコやコヤンスカヤ、そしてカルデアの言葉も全て、ある程度は聞き入れつつも妄言だとも断じていた。
己を信じて秦に絶対的な自信を持っていた始皇帝が、その事実を叩きつけられた時……コヤンスカヤは、「ざまぁwww」と言う気満々でスタンバイしていたようだけれど、結果は彼女の狙い通りとまではいかなかった。









コヤンスカヤですら想像しきれなかったほどの、ものすごい自己肯定力。
しかし、ヒナコはこうなることを予期していたらしい。
だからこそ慌ててカルデアの排除に急いでいた、ということか……。

ヒナコの望みは、停滞と安寧だったのだろう。
それは今までも本人が語っていたし、わかりやすくもあった。
……しかし、このまま中国異聞帯が『異聞帯同士の戦い』すら知らないまま留まり続けていたとして、そのまま平和に永久に存在出来るとも思えない。
戦う暇すらないままに滅びたかった、ってことなのかな。
観方によっては、彼女の目的は長い安寧の末の心中だった、とも言い換えられるのかもしれない。


敗北したうえに全てがバレてしまった今、虞美人はもはやまともに会話に加わろうとすらしていない。
そして始皇帝はorzどころかノリノリでワックワク。元気いっぱいやる気満々。
これにはさすがのコヤンスカヤも嫌気がさしたらしく、珍しくマジで『逃げた』。
なんという情けない退場っぷり……。恥ずかしくないんですか?
予想通り、第三章のコヤンスカヤは踏んだり蹴ったりだったな。プークスクス。





人と人の戦い






明確な邪魔者はいなくなった。
ようやくここからが、汎人類史と中国異聞帯の本当の闘いだ。

聖躯のままでの戦いだったならば、正直かなり厳しかっただろう。
どうやって戦うのかがそもそもよくわからないし、体当たりをされただけでもドカンであぼんな可能性も高かった。


……しかし、ここに来て、始皇帝は最後の戦いを、“人と人の戦い”にすると言い切った。
議論で答えなど出るわけがない。始皇帝は中国異聞帯に絶対の自信があり、汎人類史の弱さを見過ごせない。
主人公達は中国異聞帯の在り方に納得できず、汎人類史を守るという想いの元にここにいる。







ヒナコの最終解析を完了していたことで完成した、始皇帝の「真人」としての肉体。
巨大な聖躯ではなく、ヒトとしての大きさをしたその体で、人と人での世界を背負った戦いをすると始皇帝は決めた。

その答えに至った理由のひとつは、紛れもない荊軻さんだ。
彼女が語ったこと、彼女が成し遂げたこと、彼女が見せた最後の笑顔と輝きが、始皇帝を“変えた”。
巻物に隠した匕首の毒。スマートフォンに隠したウイルス。
かつてと同じだった。荊軻さんは始皇帝を殺すことはできずとも、停滞し留まり続けるはずだった始皇帝の在り方を変えた。彼を動かし、『不死』でなくした。









殴り合い。拳で勝者、生者を決めるという手法。
ある意味で……すごく、頭の悪いやり方でもある。
ものすごく原始的で、粗っぽくて、もちろん暴力的で……それでも、人と人は昔から、こうやって決めることしかできなかった。

争いを世界から無くした始皇帝が、最後に再び『殴り合って決める』ことにしたという、この……物語としての、とんでもない熱量。苦しみ。
始皇帝の決断は、格好良いとも思う。同時にとんでもなく自分勝手でもあって、しかしそう決断するとんでもない責任感と“重さ”を想うと、損得がどうこうではなく、受け入れる以外に何も思いつかない。


始皇帝の視野と器は、トンデモないものだった。
コヤンスカヤもドン引きするレベルの人間。2200年生き続け、民を守り続けた唯一の『人』。

彼のメンタリティの強さに注目して、長く生きつつ摩耗した他のキャラをsageる意見もたまに聞くけれど、その考え方には個人的には反対寄りだ。
始皇帝がここまでの域に至れたのは、もちろん彼の才能や人格の強さもあったのだろうけれど、中国異聞帯という特殊な環境で聖躯という機械の身体で、あらゆる奇跡と可能性の末に「1パーセント未満の確率の末にここまで至れた(けれど剪定された)」ということなのではないか、と私は思う。
『中国異聞帯の始皇帝』という存在自体が奇跡的なのかな、というのが私のイメージだった。真偽は知らん。









まぁ細かいことはさておき、始皇帝の精神性はすごく格好良いと思う。
序盤は意外とフランクな言動が興味深くて、中盤は一気に恐ろしくなって、荊軻さんとの会話を経てからの始皇帝は、更に一皮剥けた物凄い人物になった。

中国異聞帯の在り方や考え方に百パーセント同意なんて出来ないし、実のところ、やっぱりスッゲーメチャクチャ怖い人だとも思う。
しかし、物凄く魅力的なキャラクターだった。
神でありつつもすごく人間らしくもあったスカサハ・スカディとは、方向性としては全然違うベクトルだが、始皇帝は始皇帝で、びっくりするくらい面白い王だった。





我が伴侶のために






戦いに勝ち、最後の問答にも主人公は答えた。
主人公とマシュの答えに、始皇帝は納得して笑う。

彼の決断は、イコール中国異聞帯の決断だ。異聞帯の運命が、ここで定まってしまう。
それに異論を唱える資格を他の者が持たない、というのが中国異聞帯の残酷な在り方でもあった。

しかし、最後の最後に、項羽がその在り方に抗った。
中国異聞帯の民の代表……いや、正しくは、機械である項羽は民でさえないのかもしれない。
それでも最後にもう一度、「中国異聞帯の存続を願う、始皇帝以外の者」が立ちはだかるのは、汎人類史の価値観からすれば当然の流れだとも言えるだろう。
もしもの話だが、まだここに秦良玉が生き残っていたならば、彼女ももう一度命を賭して主人公たちに挑みかかっていたかもしれない。









扶桑樹の前で虞美人と並んで戦った時とは、また少し異なる“彼の理由”。
世界を守る理由も願いも、人それぞれだ。
しかし……それが、「汎人類史で果たせなかった想いを受け継ぐ」というのは、少し悲しいことのようにも思う。

もちろん気持ちは痛いほどわかる。
わかるからこそ、汎人類史では果たせなかった代わりに、虞美人に寄り添い続ける道こそを選んでほしかったようにも思ってしまう。
もっと違う形での結末を、探してほしかった。







そんな考え方も、もちろん勝者側の勝手な言い草だ。
後からならば何とでも言える。
だけど……やっぱり、こういうのは、辛過ぎる。