【単発ゲームレビュー】新サクラ大戦




「「新サクラ大戦(仮題)」を当ブログは全力で追いかけていく」の記事から一年半。
追いかけて、追いついて、プレイを終えた。
日記を書くことはできなかったので、総括的なレビューを残しておこうと思う。
今回はざっくりと【キャラクター】【システム】【シナリオ】のテーマに分けて、感想を書いていく。

 







『サクラらしさ』のある魅力的な新ヒロイン&キャラクター






新たな五人のヒロインたちは、それぞれ個性的かつ魅力に溢れていた。
たとえば初穂。最初期から仲間の一人でもある彼女は、わかりやすくメインを張る機会は少なくとも、“明るく皆を引っ張っていく、義理堅い娘”としてキャラはガツンと立っていた。
そういうタイプは女らしさに欠けがちなイメージだったが、初穂の場合は『ロングヘアサイドテール+女らしい体つき(意味深)』で女性らしさをググッとカバー。照れた際のかわいさや弱味を見せる際のレアっぷりも相まって、とても魅力的に仕上がっている。
キャラデザとキャラ造形が、「ベタだけど良いバランス」でガチッと噛み合っている……という印象を受けた。










個人的に「おっ」と感心したのはまず初穂だったが、それ以外のヒロインもデザイン・造形・設定が良い化学反応を起こしている。
それでいて、サクラ大戦シリーズプレイヤーがイメージしやすい『サクラらしさ』を損なっていないのもポイントが高い。
キャラクターデザイン担当者(絵師)という重要なポジションを変更しつつ、「雰囲気を保てている」のはかなり凄いことだろう。

アナスタシアなどは、それこそ過去作品の“大人の女ポジション”“クール枠”の匂いを感じさせつつ、新しさを感じるデザイン&立ち位置が合わさることで「新サクラの新ヒロイン」としての魅力と新鮮味を生み出していた。










新主人公・神山誠十郎は、方向性としては新次郎よりも大神一郎に近く、帝劇および帝都花組という舞台に馴染みやすく好感を持てるタイプの良いキャラクターだった。
どちらかというと軟派寄な雰囲気で、コメディが似合うのも取っつきやすいし見ていて面白い。歴代主人公の単純なコピーでは終わらず、彼もまた、「新しいのにサクラっぽい」キャラだった。新主人公としても花組の新隊長としても、個人的にはすんなりと受け入れることができた。

ただ、せっかくの過去設定が無駄遣いに等しかったのは惜しい。
それは後述する“シナリオの出来”故でもあるのだけど。










『ゲキゾウくん』は事前の予想よりずっと良かった……というか、プレイ前は可愛さがイマイチ理解しにくかった(※失礼)けど、実際にプレイしてみるとわりとすぐに好きになった。雑な「ぱおーん」連呼、キライじゃない。

サブキャラクターも個性たっぷりだったが、『多すぎて拾い切れていない』印象も受けた。
人数が多いのは、そりゃ嬉しいし楽しいに決まっているけど、各々の掘り下げが物足りなくなってしまいやすい。
そんな予想を覆せるだけの質や量が用意されていたのかというと、そういうわけでもなかったと思う。
もうちょい人数を絞って、ガッツリ掘り下げた方が良かったのでは……と残念に感じた。それぞれが面白そうなキャラでもあるので、尚のこと。







悪くは無いが、良いとも言い難いシステム






システム面は……正直快適とは言い難いかもしれない。
まず、アドベンチャーパート。シリーズお馴染みの、『マップ移動でヒロインと会い、イベントをこなす』システムが毎話に用意されているのだけど、親切すぎる部分と不親切な部分が混ざっていて、「とても面白い」ものに仕上がっているとは言い辛い。

たとえば不親切な面は「ショートカット機能がない」点。
帝劇を歩き回る面白さや、アイテム収集の楽しさのために機能を設定しなかったのだろう……と理解もできるのだけど、やっぱりダルくも感じてしまう。

親切すぎる面は、「結局イベント全てを順番に見ていくだけになっている」点。
最近のゲームではランダム性を忌避されるとも聞くし、一度で全て見られるようにという親切心兼難易度下げを意図しているのかな……とも思ったけど、そのせいで『探索する楽しさ』『帝劇や帝都を歩き回る面白さ』はかなり落ち込んでいるとも感じる。
イベントが発生する場所にまっすぐ向かうだけの道筋にしか思えなくなり、結局ショートカット機能が欲しくなる、という悪循環。

選択肢で悩む面白さや、ブロマイドの収集要素・“こいこい”できる嬉しさと楽しさは感じられるが、過去作品のように「お楽しみの自由行動タイムだ!」という興奮や「目当てのヒロインのイベントと好感度上げのために頑張ろう!」という意欲は沸き辛かったように思う。










次に、戦闘パート。こちらは仕様が過去作とガラッと変わり、シミュレーションタイプからアクションタイプにジャンル自体が変化した。
その変化や変質自体はアリだと思うのだけど、中身は練り切れていないように思う。難易度もカメラワークもその他色々でも引っかかる部分は多く、遣り甲斐や爽快感は味わいにくかった。

特に個人的に気になったのは、バトルステージのパターンの少なさだ。
謎設定の特殊ダンジョンをナシと完全否定はしないけど、さすがに頻度が多すぎるし飽きる。
せっかくの帝都舞台、初代やサクラ2と同じ舞台なのだから、「あの場所が3Dになった」「あの場所で戦える」面白さや嬉しさをもっと味わいたかったと思う。
規模的にも仕様的にも難しいに決まっているけど、せめて謎ダンジョン突入前の序盤だけは街中とか……そういう喜びやギミックにワクテカしたかった……。

なので、チマチマ発生する屋外での雑魚戦(緊急出動)は意外とキライじゃなかったり。
明るいところで戦えるだけで、なんか嬉しい……。シアワセ……。







あまりにも粗が多いシナリオ






『世界華撃団大戦』や『幻都』を絡める本筋……プロットは、まだ納得の範囲内ではある。
それでも、同じプロットであっても、きちんと丁寧に練っていけばもう少し説得力と魅力を感じさせるメインシナリオが出来たような気がする。
正直、現時点で完成形として示された【新サクラ大戦の物語】は、出来が良いとは言い難い。粗と違和感があちこちにあり、それらをフォローするでもなくそのまま纏めて完成させているため、最終的な印象としてはただただ雑なものに感じられてしまった。

細かいシーンでいえば、「第一話での上海華撃団の謎の行動」や「唐突に手摺の外側にぶら下がり、落ちかける子供」や「理由や理屈が意味不明な域にある老人スパイ疑惑」。
設定に関わる大きな歪としては、「歌劇団としての危機と隊員の演技力不足を憂うだけで、指導をしない支配人(元トップスタァ)すみれ」や「設定やルールが変わりまくる華撃団大戦」など。

特に厄介なのは、ストーリーの根幹にも関わってくる後者だ。
『“華撃団大戦”というものに対する人々の厚い信頼と好感』をルールや設定の説得力にするのなら、WOLF事務総長や各国トップの描写がまるで足りていない。有能さを感じる余地もナシ、理解できるだけのフォローもナシでは、「そういう仕様」として思考停止するしかなかった。

そして細かい部分で都度都度引っかかるせいで、シナリオが頭に入ってこない……。
上海華撃団の行動にも理解が出来ていないのに、その状況下で主人公が過去を乗り越えて殻を破っても、全然燃えない……。










サクラ大戦シリーズは半分以上がファンタジーなシナリオであり、荒唐無稽な設定やコメディチックな演出・シナリオは歴代作品にも多かった。その塩梅は作品によって多少異なり、プレイヤーの嗜好によってスキキライが別れることもあった。
……が、今回の「これら」は、そういった域に達していない。
テキストの練り不足、修正不足、勢いを重視して細部を誤魔化したまま放置した結果、ただただ『感情移入できない、無茶苦茶なシナリオ』になってしまった。
それが私は、本当に残念だと思う。










良い素材は揃っていただろう。
魅力的な新ヒロインに新主人公、3Dでもかわいらしいモデリングに帝都・帝劇を歩き回れる楽しさ、『すみれが支配人』という設定の熱さや、旧作との差別点として『華撃団としても歌劇団としてもパッとしない、かつての栄光しかない新帝劇および花組』……。
音楽は最初から最後まで素晴らしかったし、声優たちは一流揃い。
2DのCGやムービーによる作画の崩れがたまに気になったり、イベントがフルボイスじゃなかったりといった欠点もあったが……少なくとも後者については、私は気にしなかった。
ボイス優先で細かいテキストの修正や追加ができないより、ボイスなしでシナリオを加筆修正する方がずっと作品全体のクオリティは上がるだろうと思っている。……ま、その肝心なテキストの修正や調整ができていなさそうなオチなんだけど! 笑! いや笑えねぇ。

これだけの素材が揃いつつ、メインシナリオ及びそこに連なる各種テキストは、大変雑かつ無茶苦茶な内容だった。
そのため、魅力的に仕上がっていたヒロインたちの足を引っ張っているようにさえ感じられた。
特にメインヒロインの天宮さくらは、思い切りその煽りを喰らったと感じる。
作品の顔やヒロインとしての見せ場、彼女に惹かれるために重要なテキストやエピソードが、ほぼ『メインシナリオや設定に大きく関わるせいで、全然感情移入できない』状態になってしまった……。










もちろん、完成した物語の中には「いい!」と思える部分もあった。
終盤のすみれ関連のシーンは、力が入っていることがよくわかったし、設定との噛み合いで悲哀と美しさと気高さを感じて唸った。……その前後の脈略が雑かつ強引でなければ、もっと熱い場面だったと思う。

同じく終盤、各華撃団が協力していくのは、ベタだし予想も出来ていたけれどやはり良かった。
終盤になって初めて、各華撃団やキャラクターが存在していた意味を理解できた。


すみれを中心とした旧華撃団花組や、世界各国の華撃団などの扱いは、最終的には良い感じに落ち着いたように思う。
好感を抱いてここからようやくスタート……という場面でエンディングになってしまった感は否めないが、彼らに尺を掛けすぎるよりもヒロイン花組を優先すべきだったろうし、仕方がないと納得できる範囲内ではあった。

ただし、その肝心のヒロイン花組のテキスト、というかメインシナリオが……って、同じことの繰り返しになってしまうのでそろそろやめよう。
本当に残念だった……。







おわり






サクラ大戦を復活させよう」「新しいサクラ大戦を作ろう」という意気込みは本当に素晴らしかったし、感謝し続けている。
過去作の設定やキャラの扱いも、賛否は間違いなくあるだろうけど、個人的にはセーフ寄りの意見だ。
……けど、メインシナリオの粗や雑さを完全に受け入れることは、さすがに出来ない。

なんとかフォローしたいけど、正直辛いとも感じた。
その辛さは『大好きなサクラ大戦シリーズの新作のシナリオが雑』な辛さではなく、『シナリオが雑なゲームをしている』辛さだったのが、結構致命的な問題だと思う。

ヒロインの造形やグラフィック、舞台設定や音楽など、極上の素材は揃っていた。
良い部分や面白そうな要素が沢山あったからこそ、仕上がりを本当に惜しく感じる。


【新サクラ大戦】シリーズがこの先も続くのかどうかは、まだわからない。
多くの反省点を活かして、素晴らしい次回作が生まれる可能性もゼロではない。

何にせよ、新サクラ大戦は既に完成し、発展していこうとしている。
私はその挑戦を応援したいし、発展や成長する可能性に出来れば期待したいとも思っている。
頑張ってほしい。
マジで。
マジで!!!