FGO第二部 Lostbelt No.5 プレイ日記33(完) 人間の価値



第五章感想、最終回!

最大最強の異聞帯と呼ばれるだけある、超ボリュームの物語だった……!
そもそも前半・後半別れての分割方式ってのが異例中の異例。
この『大西洋異聞帯編』が第二部全体においてどれだけ重要なシナリオだったのか、その特別な扱いだけでも伝わってくる。
ここまでの物量で殴られてしまうと、次章以降は物足りなくなるのでは……なんて思いそうにもなるけど、たぶん杞憂に過ぎないんだろう。





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※本記事では1.5部サーヴァントの真名を表記しています



「マスター」と「サーヴァント」

美しいもの




プレイ日記24 フワッフワのパン」にて少しだけ語られた、キリシュタリアにとっての「人生の転換期」。
その続き……詳細が、ここに至ってようやく明かされた。

『いないもの』として扱っていた存在。見て見ぬふりですらなく、高みを目指し続ける彼の視界にすら入っていなかった存在。それに追い込まれて初めて嫌悪感と羞恥を憶えた彼は、自身の尊大さや幼稚さにようやく向き合わざるを得なくなっているようにも見える。
そしてそれ以上に、【少年】の純粋な想いと献身が、彼の価値観をぶち壊してしまった。







「キレイ」なものを守るために身を捧げ、フワッフワのパンなんかのために命を落とした少年は弱く愚かだ。だがそんな少年の方こそ純粋で眩しく、美しかった。
そして……命を長らえたキリシュタリアは、望まれていなかった理由、手に余る目的、外付けの理由のために生きることを誓う。
自分に名前を与えてくれたもののため、自らの領分を超えてしまったゼウスのように。





泡沫の夢






回想を終えて、大令呪を「本来の使い途」で消費し終えたマスターとサーヴァントは、とても穏やかに語り合う。
前回の冒頭で描かれた、“内緒話”を打ち明けた時の空気に近い雰囲気だ。彼らにとっての素は、こんな空気感だったんだろう。状況と境遇故になかなか実現はしなかったけど、本来の彼らはこんな風に、穏やかに話をしたり、弄ったりボケたり怒られたりするのが一番似合う関係だったのだと思う。









いつまでも続きそうな、のんびりとした会話。
キリシュタリアの真意やカイニスの真意……明らかになったものは色々とあったけど、一番胸を強く打ったのは、キリシュタリアがようやく口にした「夢」の話だった。
命の続く限り人間の価値を示し続けると誓ったキリシュタリア・ヴォーダイムとしてではなく、ただのAチームの一員として、純粋で素朴で不謹慎な「やりたい事」を彼は語った。





我が主に捧ぐ






自らの栄光の為でなく、この出会いに相応しい英霊である事を示す為に。
キリシュタリア・ヴォーダイムのサーヴァントとして最後まで闘い暴れ、笑い続けたカイニスの姿は、メッッチャクチャ格好良かった。
カイニスのこと、既にとっくに好きになっていたけど、このあたりのシーンで更に何段階も『好き度』が上がってしまった……。
もっと神妙に語りたいのだけど、好きとしか言いようがない。
キリシュタリアとの関係も、己の性質や過去との向き合い方も、それでも悪を貫く潔さも……全部、スッゲー良かった。 カルデアや新所長、武蔵ちゃんと築いていった危うくも近しい新しい距離感も好ましかったし、そう出来た根底にキリシュタリアの存在が結局欠かせないのも胸熱。
何度も何度も噛み締めたことだけど、『魅力的なマスターとサーヴァント』の関係って……マジで、サイコーに、良いもんですよね。
マスター個人やサーヴァント個人の魅力も増されまくりの倍々バイン。





明日を夢見た果て






オリュンポス編における主役はもう一組。
マカリオスとアデーレ、そして彼らに寄り添うエウロペの姿はとても穏やかだったが……悔いや恐怖がないと言えば、それは嘘だろう。彼らは主人公たちのことを想って、色々なものを最後まで表に出さずにいてくれただけだ。
その姿が正しかったのか、救いはあったのかのかを語るのは難しいけど、カルデアにとっての彼らはただただ優しい姉弟だった。

異聞帯の秩序の側からすれば、世界の崩壊に協力した双子は悪とも言えるだろう。そして同時に、行き止まりの世界に押し込められていた痛みや負のエネルギーが形を成した存在とも言えるし……何にせよ、我々が想像する以上に難しい立場であり、多くの苦悩と矛盾があったのだと思う。
そういった立ち位置のキャラクターが『今回の現地民枠』として長く同行しているのは、やはり新鮮で興味深かった。今までの同枠とは、また大きく異なるタイプだった。
次以降にも同じような枠が用意されているのかはわからないけど、一つの“区切り”にふさわしいポジション&露出っぷりだったように思う。
プレイ日記26 いないはずのひとたちがいたゆめ」にて、今までの現地民オールスター出演したのも、懐かしさや傷エグりの痛々しさに加えて、これもまた一つの“区切り”を感じさせ、痛みと記憶を振り返る行為としてとても良い演出だったなぁ。





総括感想




FGO第二部第五章プレイ日記、これにて完結だ。
アトランティス・オリュンポスという二部構成のストーリーは、今まで以上の大ボリュームだった。
色々なことが明らかになった一方で、問題も山ほど増えた気がした章だった。
どうやって収集を付けるのか、未だにわからねぇ!
脅威が多すぎて、なんかもうどうしたいいのか……。異聞の神とベリルたち、勝手に戦って全滅してくれねぇかな。
もしくは、もう地球を捨てねぇか? 新天地目指しての地球脱出作戦、わりとアリな気がしてきた。現実逃避は得意技。







これからのことはさておき……今回のシナリオでなんといっても良かったのは、ようやくキリシュタリアという人物について理解ができたこと。
彼の物語はとても良かったし、彼の“見栄”に見事に騙されていた私としては、気持ちのいい「してやられた感」も味わった。そしてキリシュタリアのことをとても好きになった。
ここで彼が終わってしまうのは本当に残念だけど、その終わり方が美しく清々しかったので仕方ないのだろうとも思える。このあたりの散り際の美しさと残ったものの切なさは、オフェリアの時に通じるものがある。
『キャラが死ぬシーン』は名場面にし易いけど、期待していた以上のものを見せてもらったと思った。彼らが死んだのは本当にショックだし悲しいが、とても素晴らしい最期だったので文句の言いようがない……みたいな感覚だ。

そういう意味では、たとえばカドックは逆の道を歩み続けている。
どこまでも泥臭く生き延び続けようとする彼は、良い意味で『美しい死の場面』が似合わないし、彼もそんなものを求めてはいないのだろう。
汚くても醜くても情けなくても、前に進み続けるカドックは格好いい。アナスタシアが望んだ通り、彼は最後まで生き残るような気がする……って、断言はまだ出来ないか。
何にせよ、カドックの今後は引き続きとても楽しみにしている。大令呪は使うなよ! フリじゃねぇぞ!







キリシュタリアと独特の関係を築いたサーヴァント、カイニスの描き方も想像以上にメチャクチャ良かった……。
何回も似たような語彙で褒めてる気がするけど、良かったんだから仕方がない。

彼(彼女)は第二部全体の超初期の頃から登場していたけど、そのイメージはハッキリ言って、今まで決して良くはなかった。「付き合い辛さに拍車がかかったモードレッド」的な印象で、長所や魅力はあまり描かれてこなかった。
だがその溜まりに溜まったストレスを、最終的には綺麗に昇華しきってみせた。「付き合い辛い」「面倒くさい」というマイナスよりの印象がなくなったわけでもないのに、それさえも彼(彼女)の魅力と最高の見せ場に繋がってしまった。
これはかなり凄いことだ。FGOに限らず型月作品にはよくあるのだけど、この下げて上げる感の塩梅……下げた部分さえも上げる要素に繋げてくる“ウマさ”、マジサイコー。だ~いすき。

カイニスのことも、カイニスとキリシュタリアの関係のことも、第二部五章になってようやく知ることができた。
彼らは想像していた以上に面白くて、良いコンビで、興味深い奴らだった。そして最後にはとても格好いい主従だった。







ただ……オリュンポス編全体通して、キャラクターの描写のバランスが偏っていたように感じられた点は、少なからず気になったかな。
キリシュタリア・カイニスというクリプター主従がメインでピックアップされるのは当然だろうし、嬉しかったし面白かったけど、オリュンポスの神々側は前半から引っ張ってきた双子神やゼウスさえも最終的には“あっさり”な印象で終わってしまったように感じた。
ゼウスはカオスにインパクトを丸々飲み込まれたのもデカい。せっかく途中まで良い感じに盛り上がっていたのが、より凄い存在にかき消されてしまったような感じがあって、勿体なかった。

一方で、たとえば武蔵ちゃんの終盤の描写は“過多”に片足を突っ込みかけている感もあって、燃えつつも違和感も少し覚えてしまった。
名場面として描くのなら、もうちょっと気持ちよく“ノせて”ほしい。書き下ろしや特殊演出など気合が入っていることは強く伝わってきたのだけど、文章の熱量と読者の熱量に差が出やすい場面だったように思う。
もちろん満足した人もたくさん居るのだろうけど、少なくとも私は完全には乗り切れなかったかな……。







クリプター編の終わり、FGO第二部におけるターニングポイントとして、今回のシナリオ作成はかなり難しかったのだろうと思う。
第二部五章は『オリュンポスの神々との死闘』と『第二部のテーマや真相に迫る』ことを、うまく両立させねばならなかった。
そして結果的には……「やっぱり難しかったんだな」という印象だった。

後者の第二部テーマ云々は、まだ全て明かされたわけではないので判断が難しいのだが、特に気になったのは前者『オリュンポスの神々との死闘』の方だ。
先程触れたキャラ毎のバランス云々とも重なるのだけど、シナリオを構成する中でキャラクター描写や設定の掘り下げではなく世界観説明に比重が寄りがちに感じられた。そのためゼウス以外の神々は「障害」の枠から逸脱しきることができず、肝心のゼウスさえも最期をカオスにかき消されてしまった印象が否めなかった。
そしてカオスは……事前に言及されていたし設定に存在しているし、アリかナシかで言えばアリではあるけど、RPGの概念ラスボスにありがちな「いきなり感」やインフレ感も強く、物語に感情移入しにくかったように思う。
武蔵ちゃんの描写も合わせて、あのあたりは魅せ方が巧くハマっていなかったように個人的には感じたなぁ。







異聞帯に分岐したからこそのゼウスの人間臭さや弱さ、それでも機械から脱しきれない物悲しさなど、『異聞帯のオリュンポス十二神』の物語のプロット自体は非常に秀逸なものだったと思う。
異聞帯のゼウスの父性を描き、エウロペの母性を描き、それに加えて最後の冠位ランサーの父性を持ってくるところなんかは、ストレートに熱くて胸に響いた。
ただ、双子神と破神側の双子を比較する部分とか、ゼウスにクィリヌスをぶつける熱さとか、もうちょっと掘り下げただけでバツグンに燃え確シーンになったようにも思うし……やっぱりちょくちょく、惜しさを感じてしまったかな。
良くなかったのではなく、「もっと良くできたのでは」と思うことが個人的には多かった。

もっとも、そのあたりの感じ方は人それぞれ変わるのだろう。
インド異聞帯ほどのわかりやすい“意地悪”な造りではなかったが、設定が重厚だったりテキストにクセが強い感じは、読み手によってある程度の向き・不向きのあるシナリオだったように思う。







クリプター編は、ここで一つの区切りを迎えた。
しかしFGO第二部はまだまだ続き、多くの謎や新しい爆弾までも用意されている。
気になる要素がバラまかれすぎていて、既に何かしら見落としているような気もするぞ……!
だが気付いたところでわからんもんはわからん!
型月スーパーウルトラクイズはプロに任せて、俺は寝る!

ともかく、次のブリテン異聞帯編(仮)もメチャクチャ楽しみだ。
それともリンボ編が間に挟まったりするのだろうか?
……できればリンボシナリオ前に、『アルターエゴに有利な新クラス』実装お願いしまぁす!
あいつを……あいつを、ただただ一方的に殴りたいんです!