FGOイベント 虚月館殺人事件 プレイ日記08(完) 『これからもずっと一緒だから』





虚月館イベント感想、最終回!

従来のものとは少し異なるシステムが意欲的で面白いイベントだった。
上記画像のラストのホームズの台詞といい、細かな配慮が行き届いていたのも好印象だ。
引っかかる点もないわけではなかったが、今後どんどん改良していって、また同じようなタイプのイベントを開催してほしいと思う。
 

 
















どうでもいいけどこの男、隙あらばワトソンの話をねじ込んでくるな……。
友達が傍にいなくて寂しいのか? それとも友達を自慢したいのか?

私がホームズの小説を最後に読んだのは、もう云十年以上前だと思う。
実を言えば、ホームズやワトソンの人格や逸話については、もうあまり憶えていない。















どう考えても怪しさまみれだったが、やっぱりホーソーンはグルだった。
クリスやモーリスの時の検死と比べると、シェリンガムについてはやけに語り口がフワフワしていたので、「DAYONE!」って感じだ。
実際のホーソーンの顔立ちがどんなものだったのかは、少し気になる。


ホームズはホーソーンの協力のうえで死を偽装して、犯人の目から逃れた上で秘密裏に動いていたらしい。
最初からシェリンガム=ホームズだったのならば、事件そのものも防ぐことは可能だったのでは……とも思ったが、ホームズ曰く「主人公の夢から外れるような介入は不可能」だったらしい。

要するに未来は変えられないみたいな、観測した事実は変えられないみたいな、なんとなくそういうことだろう。
うーん、よくわからんけどなんとなくわかった。















そんなこんなで、ホームズの推理ショー開幕だ。

まず最初に確認するのは、クリスのダイイングメッセージについて。
あれは、「mor」ではなく、「mom」の書き損じだった。つまりは、母親。

当然クリスの実母であったアンに疑いの目は向くけれど、そもそもクリスはアンとの血の繋がりを知ってすらいなかった。
ならば、アンを示すために「mom」と書くはずがない。「mom」は、母親であるという属性だけを伝えるためのものだった。

……ところで、個人的なちょっとした疑問。
なぜクリスは、実名やわかりやすい特徴ではなく、「mom」などという少し伝わり辛い言葉を最後のメッセージに用いたのだろう?

実名だと犯人に気付かれる危険性だとか、咄嗟でそれしか思いつかなかっただとか、理由は付けられないことはないが、なんとなく不思議なままだったように思う。
どこかで解説があっただろうか?











次に、クリスの死亡予測時間のアリバイについて。
クリスが自発的に破壊したであろう時計からは、「11時25分」という時刻が読み取れる。
その時間帯にアリバイの無い人間が、この中にはいるはずだった。















「mom」の一人であり、アリバイが曖昧だったドロシーだったが、かくれんぼをしていたケインとローリーを発見したのが他ならぬ彼女だった。
寝ぼけていた、というのはちょっと強引だったが、納得の範囲内。それらしきシーンは、まさに作中にも挿入されていたため、フェアだったと呼べるだろう。
でもちょっと強引だと思ったヨ。











施錠されていた館にシェリンガムは入ることができない。
アーロン達は、同じ部屋でポーカーをしていた。
ケイン達はかくれんぼをしていて、ジュリエットは「妹と」共にいた。

アリバイを持たない「mom」は、あとひとり。















誰もが気付き、黙り込むなかで、動機さえ読み解いていくホームズ。

ジュリエットとモーリス、クリスは許されない。しかしケインとローリーは許された。
その理由は、「mom」がひとりで抱え込んでいたであろう嘘に隠されていた。















虚月館の人々、全員が知っていたこと。
しかし、主人公だけが、「勘違い」していたこと。

ジュリエットの妹は、ハリエットではなく、エヴァだった。
そしてハリエットこそが、ヴァイオレット家の母親であり、アダムスカの妻だった。















マシュの相関図の間違いは、普通の犯人当てならばアンフェア寄りだろう。
しかし今回に限っては、「外見がサーヴァント」「主人公の認識」「一人称ゆえの勘違い」といったものを逆手に取ったトリックだった。
相関図すら含めて叙述トリックとして成り立っていた、といえる。

それも、あくまでも主人公(とマシュ)だけが勘違いしていたわけで、虚月館の事件の内容そのものにはあまり関りがなかった、というのがまた巧い。
勘違いの結果複雑に見えていたものが、気付けた途端に、シンプルな形に戻っていく。















ハリエットエヴァトリック(仮称)は比較的わかりやすく、ヒントも多かった。

けれど、犯人の動機の伏線まで張られていたのは予想外だった。
これには捻くれ者のワイ氏も素直にビックリ。全然読めなかった……。してやられたぜ……。











アーロンは、かつての遊び相手とヴァイオレット家のハリエットが同一人物だと気付いてはいなかった。
知っていたのはハリエットの側だけ。ジュリエットとエヴァ姉妹の本当の父親がアーロンであることを把握していたのは、ハリエットただ一人だった。















結婚前のちょっとした火遊びだった。
アダムスカだけは、双子の父親が別人であることだけは気付きつつも、探ることすらせずに受け入れて、ハリエットを愛してくれた。
その優しさがこの結末の一端になったのかもしれない……というのは、とても辛い。















アーロンの血を引くモーリスとクリスだけは、ジュリエットたちと婚約させるわけにはいかない。
彼らそれぞれにコンタクトを取りつつも、納得してもらえなかったため、ハリエットは犯罪に手を染めた。

……しかし個人的には、百歩譲ってモーリス殺しは納得できないこともないけれど、クリスについては先走りすぎじゃないかなと思わざるを得ないかな。
既にモーリスを殺してしまった以上、そう簡単に後には退けなくなった……というのが本音なのだろうが、それにしてもクリスカワイソス。
もちろんモーリスも、問答無用に突き落とされるとかカワイソス。











裏社会に通じるヴァイオレット家の女であるハリエットには、「殺す」以外の方法が思いつかなかったのかもしれないな。という、同情の余地もある。
もっと早くに、誰かに相談することは、ハリエットには出来なかったのだろうか?
あと少し、何かが巧く噛み合っていれば、モーリスもクリスも、ハリエットも、不幸にならずに済んだのかもしれない。
そう思うと、アダムスカやホーソーンは特に辛いだろう。















最後に自分の死を選ぶ、ハリエット。
早い段階で、彼女は既に覚悟を決めていたのかもしれない。
母親である彼女にとって、誰かの息子を殺すことは、決して気楽なものではなかったはずだ。

……そういえば、主人公に薬を盛った(かもしれない)件については、犯人はハリエットだったのだろうか?
この点はややうろ覚えなのだが、なんとなく、希望としては、ハリエットに殺意は無かったのだと信じたい。
「ジュリエットの傍にいてあげてね」みたいなことを言っていた彼女が、主人公までも傷つけようとしていたとは、できれば思いたくない。















悲しい結末で幕を閉じることとなった、今回の旅行。
最後に、一同に向けて己の決意を語り出すケイン。

わが身可愛さに長らく嘘をついていた彼は、生き方を改めることを決めた。そして、両家のありかたをも変えていきたいと考えていた。
ホームズはそれを両家にとっての希望として捉えながらも、「我々とは関係のない出来事だ」と言い切る。
それは彼の冷たさではなく、純然たる事実だ。ホームズも主人公も、ただ紛れ込んだだけの部外者にすぎなかった。











ジュリエットの最後の言葉を聞くべきなのも、主人公ではない。
だからこそ、この時点で、物語は終わる。
最後までお互いに「本当の姿」を見ることができなかったのが、少しだけ寂しい。

もしかしたら、主人公と“外側の人間”は、ほぼ同一化されていたのかもしれない。
時に主人公にしてはやけに感情的だったり、振り回されすぎているような場面があったのも、“外側”に引きずられすぎていたからなのかもしれないな。
まぁ、こればかりはよくわからない。

だけど、『選択肢』については、なんとなくそんな感じだった気がする。







<まとめ>







無駄に長くなってしまった気がする「虚月館殺人事件プレイ日記」、これにてようやく終了だ。

推理イベント、FGOを絡めたミステリーとしての出来は、なかなか良かったと思う。
FGOならではのトリックを用いつつも、伏線もヒントも丁寧に散りばめられていた。

ところどころ設定的に「ん?」と引っかかる部分もあったが、興を削ぐというほどではなかったかなとも思えた。
ストーリー最初・最後のピンスポホームズの謎語りといい、時系列の不自然さといい、あくまでも「あったかもしれないし、なかったかもしれないイベント・事件・物語」としての演出だったのだろう、と現時点では私は納得している。

これで将来的に他のイベントで、「あの時のジュリエットは~」なんて会話が普通に出てきたら「おいおいちょっと待ってくれよ」って突っ込むかもしれないが、まー結局受け入れるかもしれない。











それでも、月の光を通じてパスを繋げてくれたかもしれない云々、というのはちょっと強引だった気もする。
時間軸トリックは興味深かったし、介入の仕方などもそれなりに納得の範囲内だったので、肝心な部分だけ「不思議だね」でボンヤリ終わらされたのは少し残念だった。

そしてもうひとつ、これは個人の感覚ではあるが、「登場人物とサーヴァント本人のズレ」は最後までちょっと不安だった。
不快とまではいわないが、なんとなくソワソワして、心がザワザワし続けた。
この感覚もまたトリックで、狙った演出なのだろうが……主人公の心境とプレイヤーの心境とが、やや乖離しているように感じられるシーンもあって、なんとも言い難い気分だった。











特に、明らかに「ちょっと嫌味な人間」として描かれがちだったアーロンやモーリスは、単純に元々のサーヴァントが好きな1プレイヤーとしては、あまり気分の良いものではなかったように思う。
ミステリーにありがちな後妻マリーや無邪気に場を乱すローリーなど、「あー、あるある」とパロディ的に受け止めることもできるのだけど……うーん、まぁ、そのあたりが許容範囲内か否かは、やはり人それぞれではあるだろう。

もちろん彼らはサーヴァント本人ではないし、彼らが殺したり殺されたり暴言を吐いたわけでは、決してない。
それでも、「今回の〇〇はどんな活躍をするのだろう?」なんてワクワクしつつイベントを読み始めた身としては、少なからずショックは受けたのは間違いない。
私以上のファンだったなら、尚更ショックだったり、悲しい気分になったりしているのでは……と、思ってしまう。

あくまでも外見だけ、またはサーヴァントたちの「一部が浅く共通している」だけ、ではある。
それを私も、多くのプレイヤーも理解はしていると思うけれど、もうちょっとフォローが欲しかったかな、とも感じた。











だが、ミニイベントとして、ミニシナリオとして、ミステリーイベントとしての「虚月館殺人事件」の出来は、とても良かったと思う。
難しすぎず、ヒントも伏線もありつつ「考える余地」「悩む楽しさ」も読者に残してくれていて、とてもバランスの良いシナリオだった。

ぜひまた同じような形式のイベントを観てみたい、と心の底から思っている。
その際は、殺人などを絡ませない事件物でもいいかもしれないし、いっそ推理物ですらなくてもいいかもしれない。
相棒や調査役すら、ホームズ以外のサーヴァントでも面白いだろう。ケイローン・アンデルセンあたりの知的鯖なら王道推理物になりそうだし、鈴鹿や玉藻のような実は知的系鯖が相方ならば、彼女らの魅力を活かす物語が期待できる。エリちゃん(自称)探偵やオケキャスと事件に巻き込まれるのも楽しそうだ。
うーん、夢がどんどん広がりんぐ。


一発目が定番、王道のミステリーだったので、二発目三発目は色々とチャレンジしてみても良いよな、と素人目線で勝手に思っている。
ハードルはガンガン上がるだろうが、きっと誰かが何とかしてくれるはず(雑)。